ピザ宅配人首輪爆弾事件

2003年8月28日、宅配されたピザが突然爆発するという事件が起きた。
アメリカ・ペンシルベニア州のピザ屋に1本の電話が入り、そのピザ屋の店員・ブライアン・ウェルズ(当時46才)が配達に向かった。
時刻は午後1時47分である。
ブライアンは配達に出たまま、店には二度と戻ってこなかった。
午後2時20分、ブライアンは街のある銀行で現れ、行員にある手紙を渡し、読むように命令した。
次の瞬間、ブライアンはライフル銃を突きつけ、25万ドルを出すよう要求した。
行員はとっさの判断で銀行内で万が一の時に使われる暗号「オードリー」を使い、他の行員に銀行強盗事件発生を伝え、ブライアンに8000ドルを渡した。
ブライアンは午後2時28分、銀行から逃亡するが、2時32分に警察に包囲された。

信じられない出来事がその時に起こった。
逮捕された警察官に首に巻かれた爆弾を取ってくれと頼んできたのである。
ただちに爆弾処理班が急行し、その様子は全米で生中継された。
と、その時である。
首に巻かれた爆弾が爆発したのである。
爆発の瞬間がテレビで放映されてしまい、全米が凍りついた。

●その後の捜査
ブライアンが爆弾を首に巻かれたのはピザ屋を配達で出てからであるが、誰に巻かれたのかが謎だった。
しかし、事件から3年半後、一人の女性が捜査線上に浮かびあがった。
売春婦のマージョリーという人物である。
マージョリーとブライアンは常連客という間柄だった。
マージョリーには他に仲間がおり、ブライアンも実は銀行強盗の「仲間」だったのである。
首に巻かれた爆弾は「ニセモノ」と言われ、ブライアンは疑う事なく首に巻きつけたらしいのだ。
マージョリーの誤算は、ブライアンが焦った事により、たった8000ドルしか奪えなかった事である。
当初の計画とあまりにもかけ離れていた為、マージョリーたちはブライアンを消す事を決めたのであった。
この世からいなくなれば、自分たちがバレる事はない。
そう考えたのである。
ところが、捜査の手が自分たちに及んできた事を知った他の仲間たちが、司法取引で裏切ったのである。
つまり、マージョリー主犯の元、この事件を起こしたことを自白する事と、自分の刑を軽くすることを約束し、マージョリーを打ったのである。
こうした司法取引はアメリカでは頻繁に行われており、現在でも時折行われている。
こうしてマージョリーらの犯行が明るみとなり、事件の真相が判明したのである
それにしても何ともいいようがない事件だった。
真相が明らかとなった今ではなんてことはない話だが、犯人が首に爆弾を巻きつけられ、助けを求めながら爆死した様子がテレビ番組の生放送で放送されてしまったのである。
その状況は、想像するだけでも恐ろしい光景だっただろう。
想像を絶する結末には、世間もドギモを抜いた事件であった。